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不動産投資で青色事業専従者給与を支給するには?

個人事業主社長

不動産投資をしている個人事業主の皆さん、青色申告の大きなメリットの一つである「青色事業専従者給与」の特例をご存知でしょうか?

これは、事業主と生計を一つにする家族に支払った給与を、事業の必要経費として計上できるというものです。これにより、家族への所得分散が可能になり、世帯全体での節税効果が期待できます。

税務署が厳しく見る「青色事業専従者」の落とし穴

しかし、この特例を適用するには、家族が「専らその事業に従事していること」という重要な要件があります。単に「家族だから手伝っている」というだけでは認められず、税務調査で否認されるケースも少なくありません

今回は、実際に国税不服審判所で争われ、納税者の主張が認められなかった裁決事例(平成7年5月30日国税不服審判所裁決)を基に、税務署がどこを厳しく見ているのか、そのポイントと家族を事業専従者にする際の注意点を徹底解説します。

この記事で何がわかる?

  • 税務署が「青色事業専従者給与」のどこを厳しく見ているのか
  • 家族を専従者にする際の重要ポイント

事例の概要

不動産貸付業と理容業を営む青色申告の納税者が、妻を青色事業専従者として届け出て、給与を必要経費に計上していたものです。

納税者は、妻が夫の事業に「1日10時間以上」従事しており、青色事業専従者の要件を満たしていると主張しました。これに対し、税務当局は妻の業務量が「僅少である」として、専従者給与の計上を認めず、更正処分を行いました。この処分を不服として、納税者は審査請求を行ったのです。

納税者側の主張:妻の多岐にわたる業務

納税者
納税者

延べ時間で1日あたり10時間以上(うち理容業に3~4時間)従事していた

不動産貸付業に関する業務
理容業に関する業務

これらの業務内容と従事時間から、妻は夫の事業に「専ら従事」しており、青色事業専従者に該当すると訴えました。

不動産業に関する業務を見ると、たくさんの業務をされていると驚かれた方も多いのではないでしょうか。

税務当局・審判所の判断

国税不服審判所は、納税者側の主張を認めず、妻は青色事業専従者の要件を満たしていないと判断しました

その主な理由は、業務量が僅少であるという点に集約されます。

具体的には、以下の点が指摘されました。

不動産貸付業について

業務内容判断要旨
賃料の回収方法駐車場の賃貸料の多くが銀行振込。
妻が関与したと認められる現金受領や集金、預入れの頻度が月平均数日と低かったこと。
賃借人の流動性賃借人の交代が
平成3年で12人(13台分)
平成4年で5人(5台分)
と少なく、使用契約書作成の業務量も
それに伴い限定的
であること。
無断駐車見回り・草取りの実態毎日行われていたことを確認できる書類がなく
駐車場の所在地が比較的近いことから
1回あたりの業務時間は短時間で済む。
草取りは他の者にも給与を支払って行わせており業務量は「ごく僅か
物件管理の体制主要なビルは銀行へ賃貸しており、入居は当該銀行のみ
妻の業務は極めて僅少、あるいは実質的にない

理容業について

業務内容判断要旨
タオルの洗濯と床の清掃他の従業員がおり、妻が行っていた業務は、忙しい日のみ。
長時間を要するものではなく、「親族としての援助行為」の域を超えない
勤務時間を確認できるタイムカード等の客観的記録書類がなかったこと

これらの理由から、審判所は妻が納税者の事業に従事していたとしても、事務量は僅少であり「専ら従事していた」とは認められないとし、青色事業専従者給与の必要経費算入を否認したのです。

一部の金額を否認するというわけではなく、全額否認されたという点からも
管理会社に委託しているような不動産所得で専従者給与を支給するのがいかに難しいかを示唆しています。

家族を専従者にする際の重要ポイント

今回の事例から、専従者がどのような業務をどれくらいの時間的負担を持って行っているかを税務署がしっかり確認していることがわかりますね。

この事例から、家族を青色事業専従者にする際に事業主が特に注意すべき点が浮き彫りになります。

【家族を専従者にする際のポイント】

まとめ

実態と証拠が「青色事業専従者」の鍵!

家族を青色事業専従者として適格に認められるためには、単に家族であるというだけでなく
「業務の実態」と、それを裏付ける「客観的証拠」が極めて重要です。

その対価に見合うだけの具体的な業務従事があるか、日々の業務内容を詳細に記録し、常にその実態を証明できる体制を整えることが不可欠です。