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会社の本店移転手続きをオンラインでスムーズに進める!中小企業のための完全ガイド

法人税社長経理

会社の本店(本社)移転は、社員や顧客の利便性やオフィス移転による面積増加、さらなる販路拡大などさまざまな効果があります。

効果が高いのは確かですが、本店の移転には様々な手続きを要しますので、総務担当者や社長は、本社移転はできるだけしたくないという声も上がります。

本記事では、特に従業員の少ない中小企業の社長や実務担当者の皆様に向けて、株式会社または合同会社が法務局の管轄区域外へ本店を移転する際に、できるだけ簡単かつスムーズに手続きを進められるよう、オンラインで可能な手続きを中心に詳しく解説します。

本社移転を考えているけれど、手続きが難しそう…
どうしたら簡単にできる?

できるだけオンラインで手続きをしたい人
はじめて移転手続きをする
へ分かりやすく手続きを説明しています。

本記事が参考になる人

  • 従業員が少ない中小企業の社長・実務担当者
  • 株式会社or合同会社
  • 本店を旧住所の法務局管轄外の場所へ移す方

本店(本社)移転の手続きの流れ

本店移転の手続きの全体像
  • STEP 1
    社内の合意形成と必要書類の準備
    • 株主総会での本店移転の議
    • 取締役会での移転場所、日程の決定
    • 定款変更の準備
  • STEP 2
    法務局への本店移転登記の提出
  • STEP 3
    税務署、年金事務所等への届出

具体的な手順と詳細を見ていきましょう。

STEP 1.社内の合意形成と必要書類の準備

1-1.社内の合意形成

本店移転は、会社の重要事項の一つです。まずは社内で十分に検討し、必要な合意を得ることから始めます。

本店移転の理由を明確にしましょう。例えば、事業拡大に伴う新オフィスへの移転、賃料の安い場所への移転、交通の便が良い場所への移転などが考えられます。

これらの理由に基づき、最終的には株主総会や取締役会で承認を得る必要があります。

1-2.必要書類の準備

法務局の管轄外へ本店を移転する場合、定款の変更が必要となり、株主総会の特別決議が必要です。
具体的には下記項目を盛り込んだ資料を作成、決議します。

  • 株主総会議事録
    • 会議の開催日時、場所
    • 出席者、議案、議決権の結果
    • 移転先住所、移転日など、定款変更に関する事項
  • 取締役会議事録
    • 会議の開催日時、場所
    • 出席取締役、出席監査役
    • 議案、議決権の結果
    • 本店移転後の具体的な場所や日程

なお、取締役会を設置していない会社では、定款変更の決議の際に移転先・日程を盛り込むことで、取締役の過半数の賛同を得た書面とすることができます

STEP 2.法務局での本店移転登記手続き

会社の本店移転において最も重要な手続きの一つが、法務局での移転登記です。現在では、この手続きの一部または全部をオンラインで行うことが可能です。

2-1. 登記申請書の作成

登記申請書には、会社名、本店移転前後の住所、移転日、そして株主総会議事録や取締役会議事録の添付が必要です。

本店移転に必要な書類一覧

本店移転をする場合は、旧住所と新住所を管轄する法務局2カ所へ移転の申請をする必要があります。
旧所在地と異なる法務局の管轄に本店移転する際、必要な書類は以下の5つです。
すべて法務局のホームページからダウンロード可能です。

■旧本店所在地への提出書類
書類名備考
登記申請書本店移転(管轄外)による移転登記申請書
株主総会議事録定款に定める本店所在地を変更する場合
株主リスト株式会社の場合、必須
取締役会議事録本店の具体的な所在地を決定したもの
(株主総会決議で決定した場合は不要)

司法書士に依頼する場合は、さらに委任状が必要になります。

■新本店所在地への提出書類
書類名備考
登記申請書本店移転(管轄外)による設置登記申請書

司法書士に依頼する場合は、さらに委任状が必要になります。

2-2. 登録免許税の納付

本店移転登記には、登録免許税を納付する必要があります。オンライン申請の場合、インターネットバンキングを利用して税を納付できるメリットがあります。

2-3. オンライン申請の具体的な方法

法務局への商業・法人登記のオンライン申請は、以下の流れで進めます。

  1. 事前準備:
    • GビズIDの取得: 申請に必要となる認証システムです。
  2. 申請書の作成:
    • 法務省が提供するオンライン申請システム(e-Gov)を利用して、申請書を作成します。
  3. 電子署名の付与:
    • 作成した申請書には、電子署名を付与する必要があります。スマートフォンとマイナンバーカードを利用して電子署名を行うことができます。
  4. 登録免許税の納付:
    • インターネットバンキング等で納付します。

STEP 3.税務署、年金事務所などへの届出

法務局での本店移転登記が完了したら、次に各行政機関への届出が必要となります。これらの手続きもオンラインで申請できるものが多くあります。

本店移転登記をした場合に届出が必要な主な機関とオンライン申請の可否

提出機関提出書類オンライン申請の可否オンライン申請の方法注意点
税務署異動届出書(法人税、消費税など)e-Tax電子署名が必要
都道府県税事務所異動届出書(法人事業税、法人都道府県民税など)eLTAX
市区町村役場異動届出書(法人市民税など)eLTAX市区町村によっては届出が不要な場合もあるため要確認
年金事務所事業所関係変更届(健康保険・厚生年金保険)e-Govを通じた電子申請
労働基準監督署労働保険名称所在地等変更届(労働保険)e-Govを通じた電子申請
ハローワーク事業所名称所在地等変更届(雇用保険)e-Govを通じた電子申請

  • 税務署、都道府県税事務所、市区町村:
    • e-Tax / eLTAX: それぞれのシステムを利用して、異動届出書を提出します。GビズIDの取得や、電子証明書(マイナンバーカード等)が必要です。
  • 年金事務所、労働基準監督署、ハローワーク:
    • e-Gov: 行政手続きの総合窓口であるe-Govを通じて電子申請を行います。GビズIDの取得が必要です。

オンライン申請のメリット

  • 収入印紙を購入する手間が省け、インターネットバンキングで納付が可能。
  • 自宅やオフィスから申請できるため、法務局へ出向く手間と時間が削減できる。

本社移転に伴う費用・期間

会社の所在地によって法務局の管轄が決まっていますので、管轄の法務局へ移転の申請をする必要があります。
今回は、旧住所とは別管轄の法務局が管轄している住所へ移転する場合を説明します。

費用項目金額
登録免許税旧住所 3万円
新住所 3万円
書類作成費用司法書士 約3~5万円が相場
引越し費用だいたい社員一人当たり3万円程度

なお、登録免許税は本社移転するために支出が必要な費用ですが、書類作成費用や引っ越し費用はあくまでも目安であり、専門家や外注した場合です。
ご自身で書類作成や引っ越しをされる場合は、費用は発生しません

本社移転の決定をしてから手続き完了まで、最短でも約1~2カ月がかかることが多いです。

気をつけるべきポイント

本店移転手続きをスムーズに進めるために、以下の点に注意しましょう。

  1. 同一の商号(会社名)の確認: 移転先の住所に、既に同一の商号が登記されていないか、事前に確認が必要です。同一商号・同一住所での登記はできません。
  2. 許認可の確認:会社が特定の許認可(例:建設業許可、宅建業免許など)を受けている場合、本店移転に伴い許認可の変更手続きが必要となる場合があります。事前に管轄省庁や団体に確認しましょう。
  3. 社会保険・労働保険の手続き:移転に伴い、従業員の社会保険や労働保険に関する手続きも発生します。特に、年金事務所や労働基準監督署、ハローワークへの届出は忘れずに行いましょう。
  4. 取引先への通知:移転が完了したら、取引先や金融機関など関係者への連絡も速やかに行うことが重要です。

また、各種届出には期限があります。

提出場所提出書類名提出期限
法務局本店移転登記申請書移転日から2週間以内
税務署異動届出書
(法人税、消費税など)
移転日から遅滞なく
(概ね1ヶ月以内が目安)
都道府県税事務所異動届出書(法人事業税、法人都道府県民税など)移転日から遅滞なく
(概ね1ヶ月以内が目安)
市区町村役場異動届出書(法人市民税など)移転日から遅滞なく
(概ね1ヶ月以内が目安)
年金事務所事業所関係変更届
(健康保険・厚生年金保険)
移転日から5日以内
労働基準監督署労働保険名称所在地等変更届
(労働保険)
移転日から10日以内
ハローワーク事業所名称所在地等変更届
(雇用保険)
移転日から10日以内

まとめ

会社の本店移転は、多くの手続きを伴いますが、オンライン申請を活用することで、時間と労力を大幅に削減できます。本記事でご紹介した情報を参考に、計画的に手続きを進め、スムーズな本店移転を実現してください。

GビズIDの取得には数週間かかる場合があるため、余裕を持った事前準備が不可欠です

できるだけ自分でオンライン申請をしたいという方は「とにかくGビズIDの取得」を行うことをおススメします!

※市区町村への異動届出は、一部の地方公共団体では不要な場合や、オンライン申請に対応していない場合があるため、事前に各市区町村の窓口に確認が必要です。

ご不明な点があれば、税理士や司法書士などの専門家にご相談いただくことをお勧めします。