2025.4.18 新着記事公開【定期保険の法人税務・経理処理について】

外注費(業務委託)と給与(雇用)の違い

所得税法人税消費税社長

業務の一部を他の事業者に依頼(委託)して経費を計上した場合に、

税務調査で、外注先へ支払った費用を「外注費」とするか「給与」とするかでしばしば争いが起きることをご存じですか?

税務調査で「外注費」で計上していた経費を「給与」と認定されると、

  • 源泉所得税の徴収漏れ
  • 消費税の仕入税額控除の否認

が指摘されることとなり、徴収漏れの税金を課されたり追徴課税されることとなります。

税務調査の際に、計上した外注費を否認されないよう、

業務委託と雇用の税務面での違いを形式、実態という側面から見ていきましょう。

■形式面

業務委託雇用
契約書委託者と受託者間で業務の完遂が条件 雇用契約に基づく役務の提供
対価・委託した業務が完了した時点に
・受託者が発行した請求書に基づく
・業務の結果に関係なく労務の提供により
・会社にて賃金、給与計算に基づく

外注費とされる「業務委託」については、
事前に業務委託契約書等の契約が取り交わされ、この契約に基づいて、委託業務が完了した時点で受託者は対価を請求できる権利を得ます。また、受託者が契約に基づいて請求書を発行したうえで、委託者は支払いを行います。

それに対して、

給与とされる「雇用契約」については、
労働契約に基づいて労務の提供を受け、業務の結果には関係なく、(業務を完了していない時点においても)報酬を請求できる権利を持ちます。

つまり、

外注費業務委託)は、委託業務の完成について対価が支払われる

雇用給与)は、労務の提供自体に対して対価が支払われる

ということになります。

■実態面

税務上においては、「業務委託(外注費)」と「雇用(給与)」は国税庁によれば、一定の判断基準をもとに実態を判定しています。

具体的には下記の5つの判断基準から総合的に勘案して、実質的に「業務委託」か「雇用」かを判断されています。

難しい専門用語で書かれていますが、それぞれの判断基準について簡単に嚙み砕いて見ていきましょう。

(1) 代替性の有無

他人が代わりに業務を遂行すること又は役務を提供することが可能かという点についてです。

業務委託雇用
委託者と受託者間で業務の完遂が条件 雇用契約に基づく役務の提供

業務委託は、実際の仕事は必ずしも受託者本人限定ではなく、受託者が雇用する第三者に任せることが可能です。

雇用は、自分自身で仕事をする(=役務の提供)ことで対価を得る取引です。

(2) 拘束性の有無

対価の支払者から作業時間・作業場所を指定される、対価が時間を単価として計算されるかという点です。

業務委託雇用
委託業務に掛かった作業時間に関係なく
支払われる
勤務する日や就業時間が決められている
出勤簿、タイムカード又は本人からの報告等で
就業時間が管理

業務委託は、
「委託された業務の遂行(完成)に対して支払われるもの」となり
委託業務に掛かった作業時間に関係なく支払われます。

それに対して、

雇用は、
勤務する日や就業時間が決められています。
就業時間については、出勤簿、タイムカード又は本人からの報告等で管理されることが多いです。

※ただし、「委託業務の性質上」から時間的な拘束を受けることが必要となる場合は、例外とされます。
※業務を行う時間の指定、時間を単位とした報酬額の設定、一定時間を超えた場合に追加報酬を支払っている場合は「雇用」と判断される可能性が高いです!

(3) 指揮監督の有無

作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督を受けるかどうかという点です。

業務委託雇用
「具体的な個々の作業の内容」
「業務の進め方」等は
受託者にゆだねられる。
指揮命令をするのが一般的

業務委託は、
会社の指揮命令系統にない会社外部者に依頼する契約であるため、
「具体的な個々の作業の内容」「業務の進め方」等は受託者にゆだねられます。
なお、成果物に対する仕様(基本的要求事項)等に対する要請はOK。

それに対して、

雇用は、
雇用契約のため、 雇用主が定める就業規則に従わなければならず、
作業現場では監督者等が個々の作業について指揮命令をするのが一般的です。

(4) 報酬請求権の有無

受託者の責任のみならず不可抗力により成果物を引き渡しできない場合にも報酬を請求できるかという点です。

業務委託雇用
成果物の引渡しまで報酬が請求できない労務の提供で報酬を請求できる

業務委託は、
「成果物(完成品等)」の引き渡しがされない限り、業務委託に係る報酬は支払われません。

それに対して、

雇用は、
労務の提供を行えば結果に関係なく報酬を請求できます。

(5) 材料又は用具等の供与の有無

材料又は用具等を報酬の支払者から供与されているかどうかという点です。

業務委託雇用
合理的な理由がない限り、
業務の受託者が用意することが一般的。
受託者における事業の仕入・経費となる
雇用主が材料や用具等を役務提供者に支給

以上となります。

■実務的な判断要素として

まったくの私見ではありますが・・・

  • 受託している側が「独立して事業を行っている認識が低い」⇒受託者が給与所得として確定申告している
  • 「委託業務の内容」が、具体的・明確になっていない
  • 複数の受託者から発行されている「請求書」の内容・形式等が同じ
  • 従業員と受託者が同じ扱いを受けている(福利厚生や勤務形態、勤怠管理など・・・)

は否認される可能性が高いです。


また、単に「業務委託契約」を締結する等だけで実質が伴わない場合には、
「給与」と認定されるリスクがあるということを十分ご認識して頂きますようお願い致します。


なお、「外注費」(「販売手数料」「支払報酬」も含む)が従業員に対する「給与」として認定される場合には、
その金額が多額になることが予想されます。
つまり、税務リスクも大きなものとなります。
それは最悪の場合には、会社の存続にも影響を及ぼすような資金繰り、信用のリスクとなってしまうことを意味します。

■まとめ

否認されないために・・・

まずは、

実態を伴わない業務委託は行わない!
形式面での業務委託としての物的証拠の確保!

を徹底しましょう。

また、税務調査で否認されないよう、下記のような対策を講じておきましょう。

  • 業務委託契約書に上記の条項を盛り込む
  • 請求書は受託者に発行してもらう(形式などを指定しすぎない)
  • 「給与ではなく委託報酬(事業所得)であること」や「確定申告で事業所得にて申告してもらう」ことを受託者に説明する
  • 受託者と従業員をしっかり区別して対応が同じにならないように意識を持つ

■判断がつかない場合は税理士に相談しよう

「外注費」と「給与」は明確な線引きが難しく、税務調査でも指摘されやすい科目ではあります。

これから締結する業務委託契約について、これでいいのか不安な方は税理士に一度ご相談されることをお勧めします。

おおくぼ税理士事務所では一部の疑問点のみ聞くことができるスポット相談も承っております。
下記よりご相談ください。